アメリカ独立の年に、英国有数の名門貴族の長女に生まれたヘスター・スタノップ。社交界の花と謳われ、敬愛する叔父、宰相ウィリアム・ピットを助けてナポレオン戦争時代の英国政界の舞台裏をとりしきるが、恋に破れピットの死に遭ったのち、心機一転を図って旅に出る。しかし予期せぬ運命に操られて帰国の機会を失い、地中海を東へ東へと流れてついにレバノンの山中に住みつく。白人女性として初めてパルミラ訪問を果たし、古い修道院を山砦として周辺のアラブを支配するが…。30年をレヴァントの流転に過ごした貴婦人の破格の生涯、奇矯で強烈な個性が自尊と妄想の上に辿った現実と夢幻のあやしい交錯を描く。
「BOOKデータベース」より