プラトンのエロース探究をへて、アウグスティヌスにより確立された<愛の秩序>は、中世・近代を貫流して今日までヨーロッパの生活と文化に深く根を下ろしてきた。アウグスティヌスはすべての人が肉体を愛している現実を見て、その愛し方にこそ問題があるとして愛の秩序について語る。著者はその概念の形成と発展の姿を、愛の多様な現象をとおして初めて明らかにし、愛における普遍性を吟味する。フロイト主義の影響の下、激しく揺れ動く現代の愛の在り方に光を当て、その可能性を探究することにより、道徳の基礎としての<愛の秩序>を真正面から世に問うた問題作。ヨーロッパ世界に関心をもつ人はもちろん、愛の問題に直面する多くの読者に豊かな示唆を与えよう。
「BOOKデータベース」より