民法  上巻

中川善之助 編

[目次]

  • 目次
  • はしがき
  • 第一編 総則
  • 問題〔一〕 甲は、その先代が乙所有の隣地との境界に接着して建てた家屋の現所有者である。乙は、右境界に着手して家屋を建てるべく、所管庁の許可を得て、建築工事に着手したところ、甲から民法第二三四条所定の「●界線ヨリ五十センチメートル以上ノ距離」を存せしむべく、建築の廃止・変更の請求を受けている。この建築設計は、五十センチメートルはおろか、一センチメートルたりとも甲の要求する方向には動かしえないように、土地一杯に建てるようにできていて、すでに用材の切り組みも終り、総工費二百万円の予定で、その半額近く出費している。附近の家は、昔の甲州街道筋で、境界に民法所定の距離をおかないものが多数あり、甲を除いた隣地の所有者は、いずれも、乙が民法所定の距離をおかないことに同意している。甲の右要求は、権利濫用といいうるか。 / p1
  • 問題〔二〕 禁治産者が本心に復し、後見人の同意を得てなした行為の効力 / p23
  • 問題〔三〕 準禁治産者が保佐人の同意を得ないでなした行為は、保佐人において取消しうるか / p30
  • 問題〔四〕 創立総会代るべき方法(たとえば、少数の者が作成した定款の写や、同じく選出した役員名簿を社団の構成員たるべき者全員に配付若しくは回覧して、その意見を個別的に聴取する等の方法)を講ずれば、創立総会は開催しなくても「権利能力なき社団」を成立させることができるか。 / p37
  • 問題〔五〕 甲はA地の所有権者乙から該地上の旧陸軍飛行場滑走路のコンクリート及び土砂を土地に定着したままの状態で買受けたところ、その後国が乙とA地の使用賃借契約を締結し、右契約により米軍飛行場が右滑走路に飛来するに至り、爾後実力を以てA地を占有したため、甲のコンクリート等の採堀は事実上不能となつたので、右コンクリート等の所有権に基き国に対して損害賠償の請求をした。この場合滑走路のコンクリート及び土砂の上に独立の所有権が認められるか(コンクリート等は土地の非本質的構成部分で、取引の対象としての特定性はあるものとする。)なお滑走路には甲のコンクリート等に対する所有権の表示をした札が立つていた。 / p44
  • 問題〔六〕 甲所有の田を乙が賃借して耕作していたところ、丙がほしいままに稲苗を植えつけて収穫期が到来した。果実収穫は何人に属するか。 / p51
  • 問題〔七〕 乙は甲所有の不動産を株式会社に現物出資したが、その株式会社は形式的には存在するが会社の実体がないと認められる場合、乙の行為を以て甲の強制執行を免れるためにした虚偽仮装の行為として無効とすることができるか。 / p58
  • 問題〔八〕 Xは土地賃貸人(所有者)であり、Yはその土地の賃借人でその地上に家屋一棟を所有している。Aは他所に居住しているYの娘であるがYから、右家屋を譲り受けてその所有権移転登記をも了した。そこでXは所有権に基きAを被告として家屋收去土地明渡請求訴訟を提起した結果、昭二七年三月一四日XA間に「AはXに対し昭和二七年九月末日までに」「Aが賃借している五〇坪の地上に建設してある」「(Aの)所有する本件家屋を收去してその占有する 宅地を明渡す。」旨の調停が成立した。そしてその後Xは右家屋に居住しているYを被告として家屋退去土地明渡請求の本訴を提起したところ、Yは本件家屋の前記所有権移転はYA間の虚偽表示によってなされたものであることを証明して家屋の所有権はもちろんその敷地の賃借権の当初からYが有しているから土地明渡の義務はない旨抗争した。なお本訴の口頭弁論終結前にYA間の所有権移転登記は、抹消されて、本件家屋の登記簿上の所有名義もYに復帰した。右の事実を前提として、1 XhaYA間の虚偽表示の目的である家屋所有権並び賃借権の一方又は双方につき民法第九四条二項のいわゆる第三者に当るか。2 XがYに対して、家屋收去ではなく家屋退去土地明渡を求める本訴の利益の有無。 / p65
  • 問題〔九〕 鉄道の新線が附近を通るという噂に基き、その辺りの地価昂騰を予期して土地を買つたが、新線の計画は他に変更された。右土地の売会は錯誤となるか。 / p71
  • 問題〔一〇〕 甲が情婦乙を棄てたので、乙の兄丙が甲に談判し、承知しなければ新聞その他あらゆる方法で甲を現職から追放してやると放言したので、甲は恐れて丙の申出通り、乙に慰藉料を払う約束をした。甲はこの契約を取消せるか。乙は丙の行動を全く知らない。 / p78
  • 問題〔一一〕 甲(売主)代理人乙と丙(買主)間において、甲所有不動産につき売買契約が成立したが、その際乙は明示の顕名をしなかつた。丙は甲に対し右契約上の義務履行を訴求するが、この場合、丙において代理権の存在とあわせ民法一〇〇条但書の要件事実につき主張立証することを要するか。 / p88
  • 問題〔一二〕 甲乙間に和解契約成立しかつ即決和解の事前の合意もなされたので、甲の代理人弁士Aが乙の甲宛に差入れた代理人選任の白紙委任状を利用して、乙の代理人として弁護士Bを選任した上、起訴前の和解(即決和解)をした。右和解調書の効力如何。 / p95
  • 問題〔一三〕 代理人が権限を超えて提出した約束手形につき民法一一〇条を適用するにあたつて、同条の「第三者」には代理人と法律行為をした直接の相手方のほか、その後の手形取得者も含まれるか。 / p102
  • 問題〔一四〕 民法一一〇条の代理権ありと信ずべき正当の理由の判断にあたつて、(イ) 表見代理行為が基本代理権よりどの程度超越する行為かどうかという相手方の予見できないような事情をも考慮の対象とするか。(ロ) 代理人が本人の実印を所持して来て相手方の面前で借用証書に連帯保証人として本人の氏名を記載し捺印するということは、代理人に代理権があるということを推定させるよりも、その代理権に疑問を抱くのが通常であると解するのが妥当か。 / p108
  • 問題〔一五〕 甲は大正一〇年に丙からA地を買つたが、甲はB地もA地に含まれるものと誤信してその地に桧苗を植えた。昭和九年五月一日に甲が死亡し、甲1が家督相続をした。ところが、B地の所有者である丙は、昭和一八年七月一日にB地を乙に売つて移転登記を済ませた。甲1は昭和三一年に時効期間の起算日を昭和一〇年五月一日と任意に選択して時効取得の主張をした。正当か。 / p116
  • 第二編 物権法
  • 問題〔一〕 AはXに対して不動産を売却した後死亡し、Yが相続人である。Yは右不動産につき相続登記を経由したうえこれをZに譲渡し、Zは所有権移転登記をした。XYの法律関係。 / p124
  • 問題〔二〕 甲乙共有の家屋の登記名義が甲の単独所有となつていたため、甲は独断で丙から金円を借用して右家屋について抵当権を設定しその登記を了した。乙から丙に対し、右不動産は甲乙共有のものであることを理由に右抵当権の抹消を求める訴を提起した場合、乙は丙に対して登記なくして対抗できるか。 / p126
  • 問題〔三〕 XはZに対し金一〇万円を貸与し、Zはその債務の担保としてその所有にかかる宅地を提供することとし、弁済期までに右債務の弁済をしないときは右宅地をもつて代物弁済とする契約を締結し、Xは右宅地につき売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記を経由していたが、Zにおいて弁済期に弁済しなかつたためにZに対し代物弁済により所有権を取得したとして訴を提起し、代物弁済による所有権移転登記手続をなすべき旨の確定判決を受けた。ところがYはXが右宅地につき仮登記を経由した後で未だ所有権の取得前に所有権の取得登記をなしていた。ここにおいてXはYに対し、右宅地の所有権を取得した以上仮登記そのものの効力としてYに対抗しうるものとして、右Yの所有権取得登記抹消手続を求めてきた。右の場合、Xは本登記なくしてYに抗対しうるか。 / p134
  • 問題〔四〕 甲名義の土地を時効により取得した乙より右土地を買受けた丙は、直接甲に対して移転登記を請求しうるか。 / p139
  • 問題〔五〕 甲が乙に対する金銭貸借公正証書に基づき、乙所有の不動産に強制執行しようとしたところ、乙は右不動産に架空人名義の抵当権設定登記をしている。右登記の抹消を求めることができるか。 / p145
  • 問題〔六〕 建物の転得者が、買受人の有する所有権移転登記請求権を代位行使し、売渡人に対して直接自己に所有権移転登記手続を請求することの可否 / p150
  • 問題〔七〕 ある物の所有権を侵奪した者がこれを第三者に代理占有せしめている場合に所有権者は何人を相手に返還を求めるべきか(物上請求権の問題)。 / p156
  • 問題〔八〕 未成年者Aが親権者の同意を得ずに写真機(時価二十万円)をBに譲渡し、Bは更にCに譲渡した。Cは平穏、公然、善意、無過失に譲受けた。その後Aの親権者は、Aの行為を取消した。写真機の所有権者はAなりやCなりや。 / p162
  • 問題〔九〕 国が買収した土地に生立する樹木(国が被買収者に対しその収去を命じている)を買受けてそれを伐採した後に至り、右樹木が売主(被買収者)以外の第三者の所者に属することが判明した場合、買主は第一九二条を援用してその返還を拒めるか。 / p169
  • 問題〔一〇〕 終期の定めなき根抵当契約において、終期を到来させるための方法如何。 / p178
  • 問題〔一一〕 債務者甲所有の平家建家屋に対する統当権実行のために競売手続が進行中、最初の競売期日と民事訴訟法第六七〇条による新競売期日との間に、甲は右家屋に二階を建増したうえこの所有権及び占有権を乙に譲渡した。(一) 抵当権の効力は右家屋の建増部分にも及ぶか。もし及ばないとすれば、債権者は甲の右建増を阻止することができるか。(二) もし及ぶとすれば(以下同じ)裁判所は新競売期日の最低競売価格を決定するため右家屋を再評価させることができるか。またその必要があるか。(三) 甲は新競売期日の公告後同期日までの間、同期日の後競落期日までの間および同期日後競落許可決定確定までの間に、それぞれ右家屋の最低競売価格の不当を理由とする不服申立ができるか。(四) 右家屋の競落許可決定確定後、裁判所は甲に対する不動産引渡命令を発した。競落人が乙に対して右家屋の明渡を求めるためにはどうすればよいか。(五) 右競落許可決定確定後、競落人が競落代金を支払うまでの間に、甲はその債務を弁済したがその後競落人が競落代金を支払つて甲に対する不動産引渡命令を得た。甲又は乙が右不動産引渡命令の執行力の排除を求めるにはどうすればよいか。 / p182
  • 問題〔一二〕 昭和二八年一〇月一日根抵当付金員貸借契約(元本極度額三五万円、契約期間右同日から一年間、利息月一割、遅延利息月一割)を結び、その旨設定登記を経、同日弁済期日を昭和二九年一〇月一日と定めて三三万円を貸与したが、元金はもとより利息等の支払も得られなかつたので、昭和三〇年二月抵当権実行の申立をし、競落代金の交付期日が昭和三一年一〇月一日と定められた。この場合右期日に交付をうくべき金額(被担保債権額)をどう考えたらよいか。但し後順位抵当権者があるものとする。 / p192
  • 問題〔一三〕 原告Xがある土地を占有していることに基いて被告Yに対しその妨害排除を請求する本訴に、所有権を有することを理由として被告Yから原告Xに該土地の明渡を請求する反訴が提起された。かかる反訴の提起が許されるか。 / p199
  • 問題〔一四〕 流質の効果如何。質物を処分してしまつたら代物弁済となるのか、全然無効なのか。 / p207
  • 問題〔一五〕 決定公売処分の場合に土上権が認められるか。 / p215
  • 第三編 債権法
  • 問題〔一〕 契約の原始的履行不能の場合契約の無効と解すべきか、あるいは債務不履行の一種と解すべきか。 / p220
  • 問題〔二〕 一旦甲から乙に貸金債権の譲渡をしその旨を債務者丙に通知したのち、右債権譲渡契約を解除した場合、甲が丙に対し右貸金の請求をするにはさらに丙に対し右解除の事実を通知し、又は丙がこれを承諾するなどの対抗要件を備えることが必要か。 / p227
  • 問題〔三〕 甲丙間において、もし将来甲がその貸金債権を他に譲渡する場合には、その通知又は承諾がなくても債務者丙に対抗できる旨の特約をしたとき、かかる特約は有効か / p232
  • 問題〔四〕 原告甲は被告乙に対し代物弁済により不動産の所有権を取得したと主張し、代物弁済を原因とする所有権移転登記手続請求の訴を提起した。しかし代物弁済は要物契約であるから、移転すべき不動産につき登記を経なければ成立しない。従つて訴訟中は未だ代物弁済は成立しないわけであるが、この場合の原告の登記請求権は何に基く権利と解すべきか。又判決において登記原因を何と表示すべきか。 / p236
  • 問題〔五〕 甲が自己所有の家屋を先ず乙と、次いで丙と二重に売買契約を結んだところ右家屋が台風で倒壊した場合、甲は乙に対して代金を請求に及んだが、乙は二重売買の事実を知つてそれを理由に請求に応じないと抗争している。右請求の当否如何。 / p243
  • 問題〔六〕 内縁関係を解消し、賃借人である夫は他に転居した。賃貸人より婦に対し不法占拠を理由に明渡を請求することの当否。 / p250
  • 問題〔七〕 賃貸人は権利金の返還を請求し得るか。 / p258
  • 問題〔八〕 (1) 家屋の転借人が所有者となつた場合でも転貸人(賃貸人)は転借料不払を理由に明渡を求め得るか。(2) 右の場合賃貸料は月五〇〇円、転借料は月一〇〇〇円の約であつた場合は如何。(3) また右の場合に、転貸借に際して、前家主の承諾がなかつたことを理由に転借人(現家主)は転貸人(賃借人)に対して逆に明渡を求め得るか。 / p265
  • 問題〔九〕 つぎのような事情において、原告の被告に対する求償は可能か。「被告は原告の娘甲女の夫。原告は、被告から、神経痛の持病のある甲女を実家である原告方で静養させてほしいとの話があつて甲女を引き取つた。甲女は、原告のすすめで歯の治療をはじめ、その治療について被告の父母に対し支払を求めたが、実家で出してもらえと肯じなかつたので、原告において支出した。また甲女の神経痛の治療費およびその間の生活費も原告が支出した。甲女が神経痛の治療中別れ話が持ち上り、その際、原告および甲女は、被告に対し、右治療費を負担するよう要求したが、聞き入れられないまま、甲女と被告は調停離婚している。」 / p270
  • 問題〔一〇〕 甲は接客婦なる乙の求めにより同女に廃業資本として金一〇万円を賃貸した。乙は右金員を返還することができず、止むなく自己の肉体を提供した。その後、甲は乙に右一〇万円の返還請求の訴を提起した。甲の請求は認められるか。 / p278
  • 問題〔一一〕 XはAに建物を賃貸し、Aはこの建物をXの同意を得てYに転貸した。Yはこの建物の入口に鍵を施さないでいたところ、Bがその入口から建物に侵入し、建物内でのBの失火により建物は焼失した。YはXに対し建物焼失による損害賠償義務があるか。 / p283
  • 問題〔一二〕 金銭債務の不履行を理由として慰藉料の請求をなし得るか。 / p289
  • 問題〔一三〕 造林を業とする者の所有立木を適正伐採期前(例えば三十年)に盗伐した者(製材業)に対する損害賠償請求事件における損害額の算定は、適正伐採期(例えば六十年)における価格を出し、これを現在価に引直す(ホフマン式)方法によるべきか。それとも盗伐されたときの価格を標準とすべきか。(このような場合でも、通常すべき損害は後者を標準とすべきか) / p296
  • 問題〔一四〕 Aは深夜往来の道路を横断中、タクシー(運転手B)にはねられ、電車の軌道上に顚倒し失神状態に陥つていたところ、折柄同所を通りあわせた市電(運転手C)により、その右足を●断させる重断を負うた。運転手B、Cともに過失ありとした場合Bの賠償責任の範囲如何。 / p302
  • 関連問題 / p308

「国立国会図書館デジタルコレクション」より

この本の情報

書名 民法
著作者等 中川 善之助
書名ヨミ ミンポウ
書名別名 Minpo
シリーズ名 実例法学全集
巻冊次 上巻
出版元 青林書院新社
刊行年月 1962
ページ数 317p
大きさ 22cm
NCID BN04190005
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全国書誌番号
62010771
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言語 日本語
出版国 日本
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