はかるということは、物や現象たとえば長さ、角度、面積、体積、重量などの「量」の大きさを、それぞれの量に一定の値つまり単位を約束し、その大きさがその単位の何倍であるかを、数値に単位の名を付して表することである。これによって現代の人々は、量の大きさを抽象的な数値と単位名あるいは記号だけで相手に伝えることができ、相手はこれによってその物や現象の大きさを「再現」することができる。これが人間集団における単位設定の目的であり効果である。しかし本来はかるということは、ます灌漑溝や提防あるいは住居、さらには生活に必要な各種の道具を作り出すための技術にあった。はかることと単位と、このような技術のかかわりあいの、体系的な解明は、まだ可能の段階には達していないのではなかろうか。それならば、残り少ない技術者の技術を継承する手段を考えなければならない。この本は、筆者のこのような考えを、永年、単位の研究をしてきた雑録のいくつかを記すことによってくみとっていただき、技術の復元と保存に役立てたいという願いから出たものである。
「BOOKデータベース」より