満州国が建国された昭和七年、新しいアメリカ大使が東京に着任してきた。以後十年間、数々の忌まわしい事件や出来事を身近に見つめ、日米交渉が暗礁に乗り上げたさなか、ローズヴェルト大統領、ハル国務長官に強く進言して戦争回避に努めた大使である。その名はジョセフ・C.グルー。戦後は天皇制存続、天皇の免責に腐心したことでも知られる親日家であった。本書は、ワシントンの国立公文書館で公開されている機密文書、外交文書、大統領やマッカーサー元帥との書簡、対日ソ連側資料などを多角的に織り交ぜ、グルーの足跡を辿りながら、新しい「昭和史」をひもとくものである。
「BOOKデータベース」より