ノーベル文学賞を受賞したアメリカの文豪スタインベックの魅力はまず、読んでおもしろいことである。ヘミングウェイにないユーモアに富んでいる。そういうおもしろさを生み出すのが彼の文体である。『天の牧場』『トーティーヤ・フラット』『はつかねずみと人間』はいうまでもなく、どの小説を読んでいても機知とユーモアに満ちた、心あたたまる描写に出くわしてたのしくなる。皮肉の響きも心地よい。スタインベックの小説は一見、素朴でやさしくみえるが、読みすすめるにつれてその奥の深さに驚かされる。彼の文学的源流が、旧約聖書や新約聖書、アーサー王伝説、聖杯探求、アメリカの神話、アメリカの夢に根ざしていて、その芸術性も豊かである。本書はこのような知的想像力をもって読者を鼓舞し導いてくれるスタインベックの魅力を解き明かす。
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