本書は、80年代ヨーロッパ学界に源流をもつ「近代国家の生成」の議論を基底として、国際政治経済学や比較制度分析、歴史制度分析に至る諸学説を視野に収めつつ、財政をめぐる形成期近代国家と都市という視点で、中世後期ブルゴーニュ国家とブリュッセル財政の関係を実証的に分析したものである。まず中世盛期フランドル伯の財政を出発点に取り、それがブルゴーニュ公国の財政へと組み込まれるなかで、中世後期に至るブルゴーニュ領邦国家における財政諸制度の「近代化」過程を追跡する。他方、ブリュッセル内の政治権力とブラバント公・ブルゴーニュ公という上級権力とが、財政面を通じてどのように関係づけられるのか、毛織物ギルドやショセあるいはナシオンと呼ばれる中世都市特有の権力構造とその部分的財政の在り方を中心に辿る。そして、ブリュッセル自身の経済的成長が、間接税に重心をおく典型的な都市財政を現出させ、それが君主への援助金上納というシステム形成へと連なることを示し、領邦国家と中世都市との結合力を明らかにする。
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