個人的なものであると同時に、社会を結合させ分断させる記憶-。「私」のものでありながら、ときに手の届かないものとなり、しかし誰にでもつかみうる社会の記憶に焦点を当てたときに浮き彫りになる「記憶をめぐる言説空間」には何が立ち上がってくるのだろうか。社会的な行為としての記憶という視座を共有しながら、1995年以降の記憶をめぐる議論を整理して、「先祖と戦死者をめぐる知の編制」「上野公園と敗者の記憶」「戦争体験の記憶と語り」「博物館と地域の記憶」「過去・記憶・歴史をめぐる異和」という具体的な問題群を多様な視点から検証する。私たちを揺さぶり、私たちに揺さぶられる記憶の政治性を鋭くえぐり、ゆくえを見定める論考集。
「BOOKデータベース」より