世に言う「ヴァールブルク学派」の仕事の紹介は少なくないが、肝腎の名祖自信の著作は未知のままという奇妙な状況が続いた。個別科学の了見の狭さを「国境警察の偏見」と断じたその人を、既成の美術史や文化史の枠に押しとどめようとする倒錯も根強い。「アテナイはまさに繰り返し新たにアレクサンドリアから奪い返される必要がある」と語るヴァールブルクの思想空間の全体は、いまだ名づけられていない。この、ブルクハルトとニーチェの一族にしてフロイトとベンヤミンの同時代人、「血はユダヤ人、心はハンブルク人、魂はフィレンツェ人」の肉声に、今こそ耳を傾けよう。重要著作3篇、本邦初・新訳。
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