著者は語る。-渋谷をさまよう少女たちをみつめて。気になるのは、性の市場価値として自分にいとも簡単に誘惑されてしまう少女たちの問題である。自分が自分に負けている。-長崎の幼児誘拐殺人事件を耳にして。直感的にこの少年は、自分のことがきらいな子どもの一人であると思った。自分のことが好きであれば、理由もなく人を攻撃するといったふるまいに出ようなどという発想は生まれようがないからだ。-12歳の性と死を前にして、こう思う。自分への信頼が欠如しているに違いない。自分は自分であっていいという自己への信頼が培われるためには、"いまここに・安心して安全に安定的に・自分が自分としてある"ことをしっかりと保証された体験を不可欠とする。いうまでもなくそのような体験を保証するのが大人である。12歳は、自己をあずけうる、そのような信頼できる大人に出会ってきていないのではないか。著者は問う。この現実を前に、家族は何をなしえるというのか。それとも無力なのだろうか。
「BOOKデータベース」より