本書を出版する理由は、日本における戦争の記憶のなかでともすると脇においやられがちな戦争捕虜処遇問題への関心を少しでも広げることにある。ただし本書は、この問題についての包括的な研究をめざしたり、何らかの統一的な結論を導き出すことを目論んだりした論文集ではない。本書は、捕虜処遇の実態そのものを扱った章から、捕虜処遇問題をめぐる法的側面を論じた章、この問題の歴史的背景を検討した章、戦後における和解への道程を探った章などから成り、戦争捕虜問題を考えていく際の視点を定めるにあたって手掛かりとなる多様な議論を提供することを目的としている。
「BOOKデータベース」より