裕福な家に生まれた父・羅景錫は14歳で因習的な結婚を強いられ、併合の年に日本へ留学した。やがて大杉栄を知り、社会主義に希望を見出す。帰国後三・一運動に参加し当局の監視下に。その後、ウラジオストク、奉天と舞台を移し、波瀾の人生を歩んだ。おばもまた文筆に優れ、時代に先んじた女性だった。絵画に打ち込んだパリでの幸福な経験は、しかし思わぬ暗転の機縁となる。かつて李光洙に英語の手ほどきを受けた著者は文学の道を選んだ。朝鮮戦争の苦難、復興と民主化の長い道のりを経たいま、改めて父の時代を振り返れば、そこに浮かぶのは日本の影である。新しい両者の関係を願って書き下ろした、ある家族の体験的20世紀史。
「BOOKデータベース」より