私の書架に、二十冊近いスクラップブックが、年代を記した背をみせて並んでいる。中身は私に関するものばかりなので、けっして多くはない。折々に依頼されて、新聞に書いた小さな文章である。それらの折々の小さな文章、点みたいな自分の姿を拾って、できたら線としてつないでみようと思った。たとえ、それは細い線であっても、私の歩いて来た道である。スクラップブックを挾むように、何種類かの雑誌も並んでいる。これにも依頼を受けて書いた文章が載っている。それも小さな文章にかわりはない。が、線をたすけてくれるものである。私の小さな文章の事始めは、「啄木との運命的絆」を思うことでなされた。そして、「自然・風景・人」へと目を凝らし、さらに、私にとって前にも後にもないだろう「文芸時評」にまで、筆をひろげてしまった。
「BOOKデータベース」より