今世紀の物理学上の最大の発見「核分裂」を初めて理論的に証明した原子物理学者、リーゼ・マイトナー。女性が研究所に足を踏み入れることすら許されない時代に、リーゼは黙々と実績を重ね、カイザー・ヴィルヘルム研究所学部長として敬愛を一身に集めた。だが1938年、ユダヤ人ゆえに、ナチによってドイツを追われる。亡命生活の絶望と孤独。共同研究者オットー・ハーンの受けたノーベル賞に名もあげられない不遇。自らの発見が「原爆」をつくりだす結果を招いたことへの苦悩。時代の波に翻弄されながらも、科学への情熱と純粋な理想をつらぬいた一人の女性科学者の生涯を、感動的に描く。
「BOOKデータベース」より