高度経済成長期の農村においては、農地改革による土地制度の変革(地主制の解体)を前提として、「経営」と「生活」の面において大きな変化が生じた。後継者不足、農業人口の高齢化、中核農家の未形成、地力の低下など今日の日本農村が抱える諸問題は、基本的にこの時期に形成された。その意味で高度経済成長期は、わが国の農村史上の一大変革期であった。しかしながら、農村におけるこのような経営と生活の変化は、高度経済成長期にのみみられた現象ではなく、戦前期においても、1880年代末以降の産業化の進展とともに、ある程度認められたことであった。その内容を歴史的に跡づけることは、今日につながる高度経済成長期以降の変化がもつ意味を明確化するためにも重要な意義をもつ。
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