西欧社会はそれぞれの源を中世盛期に持つ。当時の社会のあり方がその後の西欧をほかの地域から分かち、その内部にあっては多様性をもたらす分岐点となった。イベリア半島社会はほかの西欧と何を共にし、何を別様としたのか。中世カスティーリャ社会の政治から心性に至る諸事象の必然性や相互連関を考察する本書は、通史からは見えにくい中世「スペイン」社会の基層に迫り、北西ヨーロッパとスペインとの共通点と乖離の原点を問う歴史人類学の書である。ブルジョワジーの脆弱性、異教徒との共存、法定結合姓など、スペイン特有の事象を詳らかにし、平民騎士制から「ブルジョワの裏切り」を読み取り、ユダヤ人追放のプロセスからカトリックの牙城となる近世スペインの姿を占う。さらに、西欧に共通する「命名革命」や環地中海に広く見られる名誉観念をはじめて明らかにする。
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