人間の歴史は暴力と破壊と残酷の記録で満ちている。他の動物と違って人間だけが何の理由もなしに生命を破壊することに快楽を覚えるようにみえる。人間には人間独自の潜在的破壊性があるのだろうか。このような問いから出発する著者は、まず最初に、人間がすべての動物と共有する、防衛的で反射的な「良性の攻撃」と、人間に特有な、破壊性や残酷性を伴う「悪性の攻撃」とを峻別する。さらに、人間の性格に深く根ざした情熱(愛、憎しみ、権力への渇望、羨望…)の一つとして破壊性をとらえるという視点から、「悪性の攻撃」の性質とその発達の諸条件を様々な角度から考察。破壊的性格を代表するものとして、生命あるものを死へと変貌させる情熱(ネクロフィリア)とサディズムをとりあげ、スターリンやヒトラーの性格分析にも多くの頁を割いている。『自由からの逃走』以来、著者が一貫して追究してきたテーマの一つである人間の破壊性に関する総括的研究とも言うべき本書は、同時に優れた文明論としても読むことができるだろう。
「BOOKデータベース」より
全ての動物が共有し、種の生存に役立つ「良性の攻撃」と、人間固有の、破壊性を伴う「悪性の攻撃」とを峻別。後者の諸形態を考察する。
「BOOKデータベース」より