刑法は多くの法のなかでも、著しく哲学や倫理学あるいは心理学や社会学などの諸学科に密接なつながりを持つものである。その意味では、専門外の人々にも、もっと親しまれ、もっと理解されてよいはずの法である。卑近な面では、毎朝毎夕の新聞やラジオの報道を埋めている各種の犯罪事件について、世人は多かれすくなかれ興味を持っている。その意味でも、犯罪の法であり刑罰の法である刑法は、一般の人々にもっと身近なものとして理解されることが望ましい。そういったことを目ざしてこの本を書いた。補訂に際しては、まず平成七年の刑法一部改正に準拠して条文、罪名などの表記を改めた。内容的に補足する必要のある箇所については、節の終わりに「補遺」を挿入したほか、短文で済むものについては括弧書きにして文のなかに書き加えた。判例の引用については、判例を検討する際の便宜を考え、出典を付記した。個人名については、フルネームで表記することにしたが、被告人名等は略した。
「BOOKデータベース」より