「南無阿弥陀仏」と声に出して称えれば誰でも極楽住生できる…。人々の心をたちどころに掴んだ念仏の教えは、平安末期、末法の世を生きる庶民の「救い」となった。「地獄の思想」が世のなかを次々と覆い尽くし、そして戦乱や天災、飢饉による死が目の前にあった時代、法然が深い思索を重ねた果てに到達した浄土とは何だったか。「死とは何か、生とは何か」を探究する死生学の視点をふまえ、法然浄土教が指し示した「救いの大地」をあらためて捉え直すとき、「昨日に縛られず今日を新たに生き直す」絶対肯定の思想が見えてくる。
「BOOKデータベース」より