本書は、言語実験の衰退にともなって離散したチンパンジーたちのその後の消息を追跡した記録である。彼らの運命はさまざまであった。テキサスへ「島流し」にされたニム。商品として売られ、身元不明になったアリー。生まれ故郷のアフリカへ送られたルーシー。かつて手話を覚え、脚光をあびた彼らは、一時的にもてはやされ、そして忘れられた…。彼らのたどった旅路は、人間の動物に対するあいまいな道徳観や、その時どきの科学の情勢によって強いられた巡礼の旅であった。この本は、研究者の実験動物に対する倫理の問題を投げかけている。
「BOOKデータベース」より