討ちいりは、じつのところ押し込み強盗と変わらない。衣に鎖を付けるなどした重装備の赤穂浪士が夜討ちを強行、寝巻き姿の吉良勢に襲いかかったのだ。ために十三歳の茶坊主をはじめ多くの者たちが惨殺された。吉良家随一の剣客清水一学は、じつは上野介とその愛妾との間の落とし子であった。町家の娘との激しい恋に心を残しながらも、一学は懸命に上野介を守って、熾烈な最期をとげる。吉良上野介は赤穂の者の手にかかって殺されたのではない。そのような不名誉をうとみ、周到に準備された秘策によって、みずから生命を絶ったのである。構想から二十年、真相を解く大作。
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