フロイトが精神分析を創始してから一世紀以上の時が過ぎ、こころの科学を取り巻く状況が一変しつつある今日、精神分析はわれわれに何をもたらすのだろうか。自由連想と解釈をめぐる技法論、トレーニング、カウチの使用や分析の頻度、料金の問題、心理学・精神医学との接点…。わが国の精神分析界を牽引してきた臨床家が、精神分析臨床を実践するうえでの現実的課題と展望を縦横無尽に語る。テクニカルな議論のみならず、自身を育んだ精神分析家や患者との出会い、臨床家としてのバックボーンなど、随所に語られる三者それぞれのパーソナルな精神分析観が交錯し、精神分析臨床家という生き方が立体的かつリアルに体験されるだろう。治療として、文化として、また生き方としての精神分析臨床の現在地を探る、出色の精神分析談義。
「BOOKデータベース」より