ウィーンには多様な民族が住み、自分たちの民族性をそこに持ち込み統合して<ウィーン気質>ともいうべきものを作り上げた。また、すぐれた人物がウィーンに出て活躍し、ウィーンの知的生活を豊かにした。ボヘミア・モラヴィアからはフロイト、フッサール、マーラー、ケルゼン、シュンペーターなど、ハンガリーからはヘルツル、ヘルツカなどである。これらの地域に独自の思想を探ってこそ<ウィーン精神>も明確になる。第2巻はとくにボヘミア、ハンガリーに照明を当てる。ボヘミアやハンガリーをも視野に収めてハーブスブルク帝国文化の全体像を描くのは、本書が初の試みである。本書が描き出そうとしているものは、まさにこの文化的複合体としての帝国の統一像に他ならない。それを、副題にもある通り、3月革命の起こった1848年から、オーストリアがナチス・ドイツに併合される1938年までの約1世紀間にわたって概観しようとしたのである。
「BOOKデータベース」より