繁華街でも商店街でもない場所にぽつんとある鄙びた酒場。破れた赤提灯、煤けた暖簾、汚れた引き戸。一見客を突き放す閉鎖的な空気を漂わせている。愛想をふりまく看板も品書きもない。どんな店主が経営し、どんな客が集まっているか。どうしてこんな場所に飲み屋があるか。場末の酒場にはそんな疑問がわくが、そこには現代史とも密接な関係を持った歴史があり、個性的な店主と常連客の人情が息づいているのだ。場末の酒場には、酒徒の好奇心を満足させる物語と流儀がある。日常のしがらみに疲れた人間を癒す、酒飲み心の原風景とは。
「BOOKデータベース」より