大昔、まだ岩手山の麓の一体が、原始森や野原だった頃のお話です。ある秋の日、四つの森に囲まれた小さな野原に、農民たちがやってきました。男たちが「畑起こしてもいいかあ。」と森に尋ねると、四つの森はいっせいに「いいぞお。」と答えてくれました。農民たちは、さっそく家を建て、土をたがやし、畑をつくりました。そして次の秋。穀物も豊かに実り、畑もふえて、農民たちは幸せでした。ところが、そんなある朝、村に不思議な事件が起こります…岩手県に実在する森を舞台とした、宮沢賢治のユーモラスな民話風傑作童話を、絵本画家・村上勉が、緻密で繊細な線描と、みずみずしい色彩で、楽しく表現しています。子どもから大人まで。
「BOOKデータベース」より