「かくも激しき希望の歳月」を経て、いまや不惑ちかく再びパリに相まみえる著者。街の相貌は変わって見え、あのサルトルも「覆いようのない老いを露呈」し、フーコーの活動に瞠目する。日本を離脱して見事に生きる友。鉛のような心を抱えて帰国。激動する時代をひたと見すえるも、根を持たぬ語学教師は、その想い「しらけ時代の夢見る種族」とともに漂流。だが独り暮らしも板につき独自のスタイルが徐々にでき始める。成果は、なんと「フランス料理」「ベビーシッター」。こうした模索の日々を熟成させた快著『シングル・ライフ』の誕生とその大ブレイク。様々な思いもよらぬ方面からの反響、これに続く方々へ分岐してゆくネットワークの網の目。姿を現わし始める「共生」、そしてアジア。この「杖を失った時代」を著者は、自身の書くときの「心の弾み、喜び」の鼓動とともに描き出してゆく。自伝三部作完結編。
「BOOKデータベース」より