アメリカ哲学、現代記号論の先駆者として知られながら、難解さの故にこれまで必ずしも十分理解されてこなかったパース。本書はその思想を記号論・言語学の立場から丹念に読み解き、それが人間存在そのものを問う「意味の思想」であったことを究明する。フンボルト、サピア、ウォーフら言語思想の巨星を認知言語学とともにパース記号論の中に再定位するとともに、ソシュールとの比較を通してパースの思想的射程の長さを浮彫りにする。パースの記号論が、感性/理性、自然/人間、物質/生命、意識/無意識、自己/他者、生/死など対立しあうかに見えるものを連続的・統一的に了解する優れた方法であり、宗教と科学、東洋と西洋、人間の心の働きと精神病理等についての理解を深める数々の洞察を秘めたものであることを明らかにする。
「BOOKデータベース」より