あなたの隣りに、悪魔と魔女がいる。この信念を支えた言葉の戦略とは何だったのか。魔女を召喚し断罪した、法廷としての書物。その告発と弁論に浮かび上がる、知られざるルネサンスの闇の顔とは何か。火刑台と共にあった中世末期からルネサンス期にかけての、三つのベストセラーを読む。異端審問官の手になる『魔女への鉄槌』、世紀最大の人文主義者ジャン・ボダンによる魔女弾劾の書『魔女の悪魔狂』、そしてプロテスタントの医師ヨーハン・ヴァイヤーの魔女狩りへの異議申し立ての書『悪魔による幻惑』。これらの書物は「いかに」して悪魔と魔女を語ったのか。その論理とレトリックを丹念にたどり、背後に潜む中世神学的な、あるいは近代法学的・医学的な発想の枠組みを明るみに出す。デモノロジーの書物が織り上げた魔女像から、時代の世界観が浮かび上がる。
「BOOKデータベース」より