本書は、日本の農業地域を小農複合経営という視点から分析した地域調査の成果を収録したものである。われわれは農業地域や農村の実態を分析する手法としてフィールドワークを重視した。第一に、現地における土地利用や景観の観察を注意深く行い、次いで、それらを構築し支えている経済活動や社会・文化活動の仕組みを住民や行政の聞き取り調査などから情報を収集し、さらに既存の統計や文献などを用いて明らかにした。結果として、小農複合経営は日本の農業地域を支える伝統的な仕組みであることともに、日本各地の諸環境に適応した仕組みであることが理解できた。しかし現代社会では、小農複合経営の伝統や有意性が薄れつつあり、そのことが食料生産力を低下させ、環境・景観保全機能を阻害し、地域社会を衰退させてきた。本書で明らかにされた小農複合経営の仕組みは、農家経営にとどまらず、地域資源としての人、土地、資本などの有効活用に適応できることを示唆している。
「BOOKデータベース」より