街道で馬車の事故に遭い、気を失ったアリシアは、イギリスに帰国しはだかりのムリノー侯爵に助けられた。皮肉にも、7年前に彼女の心を切り裂いた相手に。アリシアを見つめる彼の瞳には、昔と変わらぬ憎しみが浮かんでいる。それもそのはず、侯爵はアリシアが節操のない女で、彼との婚約を破棄して裕福な老人を選んだと思っているのだ。いまさら真実を話しても、自分が惨めになるだけ。アリシアはそう胸に言い聞かせて彼をにらみ返した。いつの日か再会を夢見ていた男に冷淡に扱われ、泣きたくなる気持ちを悟られぬようにして…。
「BOOKデータベース」より