うっとりするほど美しいマダム・フェリスをひと目見るなり、アンメリング子爵マーカスは自分の愛人にしたいと思った。そして社交界に顔を出さない彼女になんとか近づき、愛人にならないかと持ちかけたが、すげなく断られる。貞淑な女なら、こんな恥ずべき申し出に応じないというのだ。いつもはさっさと退散するマーカスだが、なぜか諦めきれない。彼女の孤独な影、不自然なフランス訛、愛くるしい唇…マダム・フェリスは何から何まで謎めいている。なのに以前、どこかで会ったような懐かしさを感じる。これが恋なのか?マーカスは自分の胸に手をあてて問うた。
「BOOKデータベース」より