グレン O. ギャバード, エヴァ P. レスター 著 ; 北村婦美, 北村隆人 訳
臨床家が越えてはならない一線を越えること、それを「境界侵犯」という。本書は、精神分析における「境界侵犯」の倫理的問題について、多面的理解を試みた著作の翻訳である。本書の美点は、3つあげられる。まず、普段表に出ることのない境界侵犯の事例が、豊富に紹介されていること。2つ目に境界侵犯をおかした治療者を類型化し、それぞれの精神力動を示したこと。そして最後に境界侵犯が生じた際に個人や組織がとるべき対応を、非常に具体的に論じていること、である。これらについての論述の包括性と具体性を備えた本書は、倫理的な問題が重視されつつある現代の臨床家にとって、欠かせない1冊になるであろう。
「BOOKデータベース」より