刑法学において、「犯罪とは構成要件該当の、違法旦つ有責の行為」であると定義されるのが一般です。しかし、この定義が定着したのはせいぜい、この百年くらいのことです。日本の刑法学は、ドイツ刑法学の圧倒的影響の下で、発展してきました。したがって、ドイツ刑法学で用いられている基本概念が日本刑法学でも用いられています。そのことが、刑法学の理解をいっそう難しくしているとも言えるでしょう。そこで、現在の犯罪理論を理解するためには、過去の犯罪理論、特に、ドイツ刑法学のそれを知っておく必要があります。本書は、先ず、序論で、犯罪概念の歴史的変遷、つまり、古典的犯罪概念から目的論的犯罪概念、そして、目的的行為論への変遷を概観します。
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