熱力学が、物質の熱平衡状態についてのマクロな関係式を与えるのに対して、統計力学は、ミクロな視点から、物質の性質を計算する方法を提供する。本書は、通常の教科書とは異なり、多数の粒子の量子力学から出発して、直接、統計力学を定式化する。統計と確率の基礎的概念から始めて、気体分子運動論を解説した後、量子力学について必要な説明を行ったうえで、観測量の時間平均を行うことにより、自然に統計性が導入されることを示す。これに基づき、小正準集合、正準集合、大正準集合の統計集団を導入し、それらと熱力学との関係を明らかにする。標準的な例題とそれを補う章末練習問題により、容易に実践的な習得が可能である。
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