「考える自由は人間の生命です」-絶対王政が崩壊に向かい、革命への予感が兆す一八世紀フランスにあって、ヴォルテールと名乗った男は、そう記した。生涯にわたって文化的に、そして政治的に巨大な存在であり続けたヴォルテールは、古代から同時代に至る文学・思想・芸術の圧倒的な教養を背景に、宗教権力や盲信と闘い、農奴解放のために奔走し、ついにはフランスの僻地フェルネーに共同体を建設する。彼を「ヴォルテール」たらしめたもの、それは「人間の生命」である精神の自由にほかならなかった。本書は、パリを追放され、ベルリンの宮廷に招聘されたヴォルテールがプロシアを離れて以降の後半生を、一万数千通に及ぶ書簡を渉猟しながら克明に描き出す。そこに刻まれた激しくも伸びやかな軌跡は、この世紀のヨーロッパが生み出しえた最良の精神を今日に甦らせる。
「BOOKデータベース」より