スロヴァキアは、独立国となってまだ十余年しか経っていない。国土は日本の八分の一、人口は日本の二〇分の一という小国である。国際的な知名度も低い。しかしここに住む人たちは、自分の国を大国にのしあげようなどという野心を持たず、歴史的に見ても自らの意志で異国に攻め入ったり、他の民族を支配下に置いたりしたことはない。逆に、近隣の大国に長年支配されていたのだ。しかし、人々は明るい気持ちを保ち続け、貧しくとも陽気に暮らし、自分たちの文化を育んできた。強力な軍事力や国際政治での影響力を持たなくても、文化に依拠しながら一つの民族として歴史と現代を生き抜いている。その生き様を本書で描いてみたかった。そして、そこから日本社会に向けてどんなメッセージが発せられるかを、考えてみたかった。
「BOOKデータベース」より