イギリスにキリスト教が伝わっておよそ一五〇〇年、この間に異民族の侵入、宗教改革、内戦など大きな変革をくぐりぬけて今日の大聖堂がある。その歴史の重みを思うとき、長大な時の流れ中に足跡を残してきた人びとを思うとき、なんともいえぬ感動に震える。この巨大な建築物をうち建てた人びとの素朴な信仰に思いをはせると、畏敬の念と同時に、神より他に頼るもののなかった人びとの営みに哀れを思わずにはいられない。一方、信じるものを失ったわれわれの心の貧困さに比べて、中世の人びとはいかに心豊かであったことか。
「BOOKデータベース」より