近代軍隊制度の成立以来、個人の領域にあるべき「死」を国民の義務として強要する兵役に対して、その暴力性に抗する、命令への不服従という実践としておこなわれてきた兵役拒否とはなにか。「死にたくない」という人間の原始的感情を「私情」へと転換する戦場でなされる、国家の意志に対抗する批判的なメッセージとしての兵役拒否。宗教に裏づけられた良心的兵役拒否だけでなく、生への執着や恐怖などからなされる自傷行為、失踪、逃亡などの兵役忌避までをその対象として捉えて、個人と国家との緊張関係の極限に生じる矛盾と葛藤を浮き彫りにする。人の精神の強靱と脆さをともに抱える抵抗としての兵役拒否を、世界的な視野で論理的・歴史的に検証する論考集。
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