ヨーロッパ世界は、11世紀から13世紀にかけて固有の文明を確立していった。そうした歴史的ヨーロッパの十字路に位置したベルギー東部のムーズ川中流域における都市社会の形成を中心に、都市の概念、商業と技術、人々の意識(心性)の在り方を考察した本書は、ヨーロッパ中世文明の特徴的な諸要素を、その相互連関に留意しつつ明らかにした地域史研究である。都市的自由の早期の出現と広がり、都市支配層の多様な出自、地域の内外を結びつけた商工業の発展と伝播、法意識の形成と聖職者の役割、奇跡や婚姻概念を媒介とする中世的心性の探求など、本書で取り上げられたテーマは、いずれも地域史的視点からヨーロッパ中世を照射し、その基層を浮かび上がらせている。
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