強烈なストレスから精神錯乱を来した青年が、少女のひたむきな愛の力でようやく心の闇から抜け出すという、いわば青年の心の旅路が物語のテーマとなっている。しかし単に、夢想、狂気、現実が渾然一体となった幻想的奇談というだけではない。病んだ心を癒す、という難問に対する一人の娘の真摯な取り組みは、今の時代にもそのまま通じる問題のように思われる。スウェーデンの中西部ダーラナ地方とヴェルムランド地方を主な舞台に、1830年代末という時代設定のもとに書かれた、郷土色豊かな物語である。
「BOOKデータベース」より