作家をめざしていた津村節子は、昭和二八年、同じ志をもつ吉村昭と結婚した。そして節子は、本名北原節子の名前で、三谷晴美(瀬戸内寂聴)、佐伯千秋、三木澄子らとともに、少女小説の世界で活躍を始めた。一方、昭は作家としてなかなか芽が出ず、紡績糸販売の仕事で不渡り手形を出してしまい、その代償として三カ月余にわたる東北行商の旅に出る。心配になった節子は石巻にかけつけるが…。戦後文学史に大きな足跡を残してきた作家夫妻の、同行者にしてライヴァルという関係を、主要作品をたどりながら丁寧に描きだす。
「BOOKデータベース」より