最愛の夫、最高の共同研究者だったピエールを失って悲しみに沈むマリーが、ある晩、突然若やいで現われる。かすかな春の気配のように、しかし、あとには厳しい試練が待ち受けていた。フランス科学アカデミーからの拒絶、さらに同僚の科学者ポール・ランジュヴァンとの恋愛スキャンダル、二度目のノーベル賞さえも、マリーの断固たる姿勢がなければ受賞は危うかった。それでも、マリーは不死鳥のように蘇る。マリーの業績ほどには知られないその敗北と屈辱をとらえ、科学者としての偉大さが献身的努力よりも、放射能は元素固有の「原子的性質」であると確信した鋭い洞察にあることを示し、「マリー・キュリー神話」の創出を追いつつ感動的なラストシーンまで、クインの筆は一気に進められる。
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