時の天皇が"日の帝"と呼ばれるのに対し、その弟である一条の大臣は、"月の帝"と異称された。それは、一条の大臣が、こよなく月を愛し、月からも愛されたからである。しかも、この大臣は恋多く、女性からも愛され、ある種の"異能"の持ち主でもあった。さて、月の帝が中心になって推進された、京の都の葵祭りの夜、高位高官の者たちの屋敷が、盗賊に荒らされた。月の帝は、それを自分への挑戦と受けとり、秘かに行動を起こした。果たして盗賊の正体は何者か。何が目的か-。狂おしい恋がからんだ、華麗なる平安絵巻。
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