ほらね、ぼくは忘れていないと、300時間かけて語ったよき仲間、愛した女性、その時代。トスカーナ地方での辛酸から、国際都市マルセイユへ。ヴィシー政権下、そこだけ陽のあたっている自由の街で、彼ははじめて歌う。パリが待っている。エディット・ビアフとの破れた恋。プレヴェールはじめ、よき仲間たち。そして、シモーヌ・シニョレ。すべての出会いを糧にして、イヴは上昇をつづける。モンタン(上昇する)の名前のとおりに。花開き、「歌うプロレタリア」と喝采されるさなかに、彼は脱皮をはかる。真の歌手に、もっと大きな存在へと。
「BOOKデータベース」より