身体から斬り放たれた首が、こちらを向いていた。その生首は-「兄貴だ」。週刊誌キャップの兄・鋭一の依頼は、上海マフィアの取材だった。上海から日本へ密輸される恐るべき犯罪を追い、「私」淡島鋭二は新宿の闇の中へ。密入国者・楊と、娼婦・春香への接触から、戦慄の真相が…。しかし、不気味な男・夏の手で、鍵を握る楊が斬殺され、香春を奪われた。容赦無き暴力は兄までも。身を抉る怒りを胸に私は上海へ。敵陣深く潜入する私を、絶対絶命の危機が次々に襲う。温厚な男が兇悪な世界に突然叩き込まれた。男の中に眠る戦士の眼醒めを、そして彼を待つ恐怖を、興奮を、感動を練達の筆致で見事に描ききった入魂の書下ろし傑作。
「BOOKデータベース」より